香山リカのココロの万華鏡で

平成25年4月9日付、毎日新聞の「香山リカのココロの万華鏡」に次のような願いが書かれていた。

「いま子育て中の人には理由や条件抜きで、子どもに「世界一かわいいわね」「こんなにお利口さんはいない」と声をかけてあげてもらいたい。」、と。

香山氏は、親からの愛を受け取ることができなかった小説家の佐藤亜有子さんの若すぎる死を嘆いている。そして、「子どもの頃に親から愛されなかった」というココロの傷が、大人になってからも癒えない人は少なくないと指摘する。子どもの頃に無条件で愛され、思いやりをもらった子は、他人を信じることができる。そうした体験が不足すると、他人を信じることができにくくなるばかりか、自分をも信じることができなくなると言われる。

だから、香山氏は、子育て中の親は無条件で子どもを愛して欲しいと訴える。

杉並区を筆頭に、足立区、大田区、はたまたは埼玉県まで。待機児の子を持つ親たちの行政不服申請が続出している。

どうしても子どもを保育園に預けたいらしい。しかし、預けられる0歳や1歳の子供たちの心を考えてみれば、その子たちが、喜んで保育園に預けられたいと思っている訳がない。

世界一大好きなお母さんと一緒にいたいのである。

確かに、家のローンや家賃のことを考えれば、妻が働かなければやっていかないという状況は理解できる。でも一方で、柳美里氏が著作「家族の標本」で訴えていたこと、「家族の不幸は家のローンから始まる」といったことも考えてしまう。

お金が大事か、子どもが大事か、どっちだろうか。とにかく子育ての時間が失われる。子どもは一対一の関係を親に望んでいる。保育園ではそれができない。

昨日来園した保育園のパネルの修理にやってきてくれた部長さんが、「この年度末は、とても忙しかった。とにかく一ヶ月で保育園にしてくれというような要望が相次ぎ、結局手抜き工事のオンパレードになってますよ。」と、嘆いていた。

補足するが、この部長さんが扱ってくれたパネルはもう35年を経過しているのに、きちんと修理にやってきてくれるのですよ。このような方だから、現状について嘆かれているのだろう。

お話を聞いて、突貫工事で保育園を作っている社会の状況が分かった。やはり、この国の保育施策は、曲がり角を曲がってしまったのだと理解できた。

厚生労働省の村木厚子さんが、待機児解消のため、法律を前倒しにして、無認可保育所に国の補助を出すというようなことを始めたから、無節操な会社が、どんどん保育所を作り始めているということなのだろう。本当に困ったことだ。

共働き夫婦の子育てをどう支援するか

「共働き夫婦の子育てをどう支援するか」

中野由美子(目白学園女子短期大学教授)

仕事と子育ての両立支援としての延長保育  

少子社会での家庭支援に向けて、国や行政は、保育サービスの多様化、父親の育児参加や子育てのネットワーク化を支援する体制の整備を急ぎつつあります。5年前から実施されている十カ年計画の子育て支援策「エンゼルプラン」の前半5年間は、仕事と子育ての両立支援、延長保育による親の就労支援が中心でした。平成11年度末には、9000ケ所の保育所で、7時ころまでの延長保育が定着する予定です。同時に、待機児が解消されない低年齢児保育の拡大や病児保育施設の設置、学童保育所の定着などがこれからの課題になっています。

その一方で、身体の動きがぎこちない、生活リズムが定着していない、食事についての悩みが多いなど、生物としての子どもの行動が変わってきているという報告や、周りの子どもへの関心が低い、集団保育が成り立たない、学級崩壊につながる予兆があるなど、社会的な存在としての子どもの変化を心配する声も聞かれます。子どもの変化の背景には親の変化、社会の変化があるわけですが、「親の子育てを見ていると予想できないようなことが起こる」「親にどういえば理解してもらえるか悩む」など、保育者たちは最近の親子に、今までにない質的な違和感を抱き始めているようです。

保育士から見た延長保育「保育者たちの調査から」

このような状況を確かめるために、平成11年7月、私たちは、横浜市とその周辺地域で、園の責任者と保育者にアンケート調査を実施し、約436人からの協力を得ました(保育所179人、幼稚園165人、保育ボランティア92人)。園での子どもの様子や親の子育てのしかた、保育者の家庭支援の現状を中心に調査し、延長保育についても自由記述をお願いしました。

ここでは、保育者たちが延長保育拡大の影響をどのように感じているのか、生の意見を紹介しながら、共働き夫婦の子育て支援について考えてみましょう(調査した保育所の延長保育は夕方6時30分~7時が多く、その実施率は68%でしたが、97%が今後の増加を予想していました)。

子どもにとっての延長保育 

子どもにとってのプラス点は、「遊び場があり、異年齢の友達がいつもいる」「4歳以上には問題が少ない」であり、ついで、「二重、三重保育から解放される」「母親に時間的な余裕ができストレス発散になるので、子どもにやさしくなれる」「密着している親子関係にはよい」などでした。

マイナス点としては、心身への負担(とくに0~2歳の低年齢児)を心配しており、「生活リズムが夜型になり、疲労が取れないのか昼間ボーッとしている」「親子接触時間が減り、親との一対一のスキンシップや甘えの充足が不十分になりがち」「集団生活が長引き緊張が続き、リラックスする時間の減少が、体の疲れと心の欲求不満につながっている」などの意見が大勢でした。保育士たちは、家庭的な雰囲気の部屋づくりや保育内容の確保、親代わりの役割に配慮して、延長保育に対応しようとしていました。

親にとっての延長保育

親にとってのプラス点は、「送迎時間を気にせず、仕事に専念できる」「時間的に余裕ができる」などですが、「かえって家庭に帰ってからの忙しさが増すので、母親の健康への心配や家事負担感が増えるのではないか」というような、母親と同じく働く女性の視点からの保育士の意見はかなり厳しいものがあり、マイナス点の指摘が多いことに驚かされました。

「園は家庭には代われない。家庭が寝るだけの場ではおかしい」「延長保育が、親の労働時間の増加でしかなく、親子の接触時間の減少とその内容の貧しさにつながっているのではないか」という危惧、「親の時間の余裕が、子育ての余裕につながるのか」「子どもの世話は他人任せでよいのか」という懐疑、「親が楽するほど、子どもの育ちは悪くなっていく」「必要がないのに預ける親もいる」などの親への批判、「子どもの成長過程を親が知らないままでいいのか」「親の子育て心を萎えさせる」「親が大人として育っていけなくなるのではないか」などの親の成熟を心配する声、さらには、「親が楽をするだけの支援の手伝いはしたくない」「長時間預かることが支援だとは思えない」「保育所ではしかたがないが、幼稚園ではしてはいけないと思う」など、保育士自身の自己葛藤も見られました。

延長保育の直接の担当者となることが多い独身や未婚の保育士の中には、「女性も働く時代だからしかたがない」「親子関係は内容と密度の問題。親がしっかりしていれば心配ない」「子どもも小さい時から、自立してしっかりするようになることが大切」「親と保育士との話す機会が増え、親の気持ちを理解できるようになった」など、少数ながら前向きに受け取る意見も見られました。

保育士から見た延長保育

しかしそれ以上に、延長保育は、「子どものためよりも、親のためでしかない」「長期的に見て、本当の子育て支援になるのか疑問に思う。親が子育てに喜びを感じ、親自身が苦労して親子の絆をつくることが親子の将来にとって最も大事なこと。子育て支援が、子育て放棄につながらないか胸を痛めている」「親が仕事と子育ての両立にイライラしている。預けっぱなしの親、行事に参加しない親、無反応な親が多い。親の関心、親からの感謝の気持ち、親の子育ての意欲があれば応じる態勢はあるが、保育者としての意欲がなくなる現状である」など、現状への懐疑的な意見が多いのが事実です。

総論は、「延長保育が子育て支援という短絡的な考え方ではなく、育児そのものを喜びと感じることができる風潮がほしい。上の世代が若い世代を受け入れる力がなくなりつつあるいま、若い人たちが育児に関心をもてるような世代間交流を考えていきたい」、そのためには、「延長保育よりも、幼い子どもをもつ親の労働時間の短縮、母親の再就職や労働保障制度をつくることが先決。保育所では、乳幼児期の親子関係づくりにマイナスにならないような、そんな親子の絆づくりの支援をしていきたいと思う」という意見に集約されるといえましょう。

家庭支援者である保育士たちの新しい役割

この調査の保育士の86%は、「保育士は子どもの保育だけをすればよいと思う」とは思っておらず、78%が「不足している親子のかかわりを援助することは、保育士の役目であると思う」と答えています(幼稚園で60%、保育ボランティアで78%)。また、「保育士が親の子育てに介入することは、好まれないと思うか」の問には、約65%が「ちがう」と答え、「そうだ」の33%を上回っていました。

保育者たちはすでに、次世代の主人公である子どもの健全な成長のためには、親への支援は避けて通れないことを認識し始めています。そして、子育て体験の乏しい親の世代を理解し支援することの必要性を感じ取り、「子どもの家庭での様子を親に聞き」、「保育中の子どもの言動を親に伝え」、「批判することなく親の話を聞き」、「親を励ましたり、ほめたりし」、「親に問題点の指摘だけではなく、具体的なやり方や見通しを伝え」、「子育て以外の親の相談にのり」、「親の友達づくりを援助する」役割を取り始めていました。

「子ども預かり型」支援から「親子関係づくり型」支援へ

私たちは、21世紀の家庭支援として、子どもだけを「預かる」発想から一歩進んで、親子が共に育つ家庭支援、「親子関係づくり型」支援を提案しています。これからは、「子どもを預かるほど家庭が機能を失い、親も子も疲れる」ことのないような支援、親の労働支援だけではなく、親が成熟する機会と親子の信頼関係を充分に形成でき、子どもの成長・発達が保障される家庭支援が求められています。太陽と水、きれいな空気とこやしを施しながら、親子の根っこの部分をゆっくり、そしてしっかりと育てる子育てができる、子育てを楽しむ余裕と自己実現できる生き方を母親に保障する、子育てに参加する時間と喜びを父親から奪わない社会のあり方を実現する、そんな家庭支援であってほしいと願っています。

「親子関係づくり型」支援の担い手は、保育者が最もふさわしいと思います。なぜなら、保育所や子育てネットワークには、親子が共に相まみえ、育ち合える条件が揃っており、親子の間をつなぐ位置にいる保育者の経験はそのまま、親子育ち、親子育ての支援者としての条件を満たしているからです。保育者は、その成長を促す豊かな生活体験を通して人間発達の基盤を支える「子どもへの支援者」であるばかりでなく、子育ての協働者として親を支え、励まし、育てる「親たちへの支援者」でもあるのです。

多くの調査結果が物語るように、共働きの母親たちは専業の母親よりも、「子育てが楽しい」「子どもがかわいい」と感じている割合が高いのです。共働きの親は、自分たちだけの子育ての限界を肌で感じ、保育士との連携が子どもの成長に欠かせないことを知っています。そして、保育士の支援があるからこそ、親子が成長できるありがたさも分かっています。これからの保育者は、保育の専門家としてだけではなく、親子が集い、遊び、学び、相談する場として保育所を位置づけ、親子関係を支え、親を育てる家庭支援の専門家として、その新しい役割を模索してほしいと願ってやみません。

参考文献: 中野由美子・土谷みち子編著『21世紀の親子支援-保育者へのメッセージ-』
1999年、ブレーン出版
家庭教育研究所紀要21号『今後の育児支援を保育者の立場から考える-保育者調査の結果をふまえて-』
1999年、財団法人小平記念会家庭教育研究所

 

中野由美子(なかの・ゆみこ)

(財)家庭教育研究所教育委員。目白学園女子短期大学生活科学科教授。

1944年 生まれ。京都大学教育学部卒業。東京大学教育学博士課程修了。

子育てにおける 母親・父親の役割やその影響に関する研究、両親の成長を支援する両親教育に取 り組む。

共著に『21世紀の親子支援』(ブレーン出版)、『子どもの発達と父親 の役割』(ミネルヴァ書房)など。

EUの子育て支援政策 「家族責任」

EUの子育て支援政策

子どものニーズをめぐる親と社会の責任

岩上真珠(明星大学教授)

はじめに

昨年、厚生省の「育児をしない男を、父とは呼ばない」というキャンペーンが注目されたが、話題を呼んだこのフレーズの背景には、EUが推進してきた男女機会均等推進行動計画(Action program of equalopportunity for women and men)の基本的理念がある。 我が国でも男女共同参画社会の構想のもと、子育て支援や女性が働きやすい環境の整備など、政府レベルでの取り組みも始まった。その背景には、1980年代から急激に加速した、世界でも類をみない速度で進んだ未婚化、少子化、高齢化の人口変動がある。少子・高齢化はいわば先進社会の宿命であるが、ここでは、いち早くそうした動向に反応し、それをジェンダー政策として展開する中で、子育て支援をはじめさまざまな家族支援政策を押し進めてきたEUの取り組みを紹介してみよう。

1.EUの男女機会均等推進行動計画と「家族」政策

家族政策への舵取り

女性の社会進出を図るために、EUにおいて1970年代から準備され、80年代に入って本格的に動き始めた雇用をめぐる男女平等化政策は、90年代に入ると、子育て支援という形で家族政策としても登場するようになった。雇用の機会均等から始められた平等化政策の推進は、当然の成り行きとして、教育、地域社会、家族をはじめとするあらゆる社会的セクターにおける平等化の進展を促すことになった。とりわけ、女性の職業社会への進出に伴って議論されるようになった幼い子どもの子育て担当の問題をきっかけに、ジェンダー政策の推進は、必然的に家族政策と連携することとなった。
そもそもEUにおいて、家族に直接かかわる政策が登場するのは1980年代後半になってからである。それまでEU委員会は家族の問題に立ち入ることには消極的であった。それには3つの理由がある。 (1)若者、高齢者、健康問題などは、各国間のイデオロギーに相違があり、EU内部の分裂を生じやすい、(2)家庭生活はプライベートな領域であり、国家の干渉を嫌うと考える政府がある、(3)これまで、EU内の主要国が市民権よりも労働者の権利に焦点を合わせていたので、EC時代を通じて家庭の福祉は低い優先順位しか与えられてこなかった経緯がある、というものである。

次代の健全育成への関心

しかし、80年代後半になると、EU各国は積極的に家族に法的位置づけを与え始めた。1989年のEC委員会(当時)報告書においてはじめて、家族が「社会の凝集性と未来に」基本的な役割を果たすことが示され、また、イデオロギーの基盤としてではなく、重要な経済的役割の担い手であるという理由によって、家族がEUレベルのアクションの対象となることが正当化されたのである。我が国と同様、こうした動きの背景には、EU諸国が過去20年間に経験してきた、出生率の激減、結婚率の減少と離婚率の増大、婚姻外の出生やひとり親家庭の増加など、次代の育成にかかわるEU各国共通の課題があったことも事実である。女性の職場への進出を積極的に促し、かつ出生率を回復もしくは維持するためには、子どもが産みやすい、また育てやすい環境整備が不可欠とEUレベルで認識されたのである。

2.職業生活と家庭生活の両立

子育て支援を明確にしたEUの男女機会均等推進第3次行動計画

ところで、今年で第4次を終ろうとしているEUの男女機会均等推進行動計画(アクション・プログラム)の実質的スタートは、1970年代である。一定の準備期間を経て、第1次(1982-85年)、第2次(1986-90年)、第3次(1991-95年)、第4次(1996-99年)と展開されてきたこの行動計画において、明確に「家族」に焦点があてられるようになるのは、第3次行動計画からである。第3次計画では、子育てに関する女性と男性、家族と社会の責任の分担が、EU本部および加盟各国の家族政策として登場してきた。すでに、1986年に第2次行動計画において子育てネットワークが設置されていたが、1991年には「男女の雇用と家族責任の両立に向けた子育てネットワーク」という新名称で強化された。90年代後半からの第4次計画においては、第3次での方針がさらに徹底された。すなわち、男女双方が仕事と家庭生活を両立させるための政策の推進と、政策決定過程でのジェンダーバランスへのいっそうの配慮が目標として掲げられている。

さて、女性の雇用における地位の確立を目指してスタートした男女機会均等推進行動計画の展開過程において、明確に打ちだされてきた理念が「職業生活と家庭生活の両立」である。この背景には2つの動向が考えられる。第1に、家族にかかわる人口学的現象の変化(とりわけ出生率の低下)、第2に、「被用者の権利」から「市民の権利」へという女性政策の転換である。そこで、こうした理念が登場する経緯を、この行動計画を一貫してリードしてきたデンマークの例でみていくことにしよう。

家庭生活はこれでいいのかという疑問

デンマークでは、男女の平等を早くから政策化し、EU域内にあってはスウェーデンの加盟以前には女性の労働力率がもっとも高く、1980年代当時、20~59歳ではゆうに80%を超えていた。子育て期間の落ち込みもなく、男性と同じいわゆる台形型の就労曲線を描く。ところが、そうしたデンマークで、1980年代半ばに家庭生活の現状を疑問視する声があがり始めた。たとえば、「子どもたちは両親をしっかりみているか」「子育てに実際に責任があるのは誰か-親か保母か」「父親は家事に十分参加しているか」「家庭が大事だと言いながら、なぜ親は長時間働いているのか」などの点についてである。これらの議論の背景には、1980年代はじめに1・3台にまで落ち込んだ出生率の急激な低下と、子どもの問題行動頻発への危機感があった。
そこでデンマーク政府は、政府全省を横断する子どもに関する委員会を設置して「家庭生活と職業生活の調和」のプロジェクトを設け、家族の労働時間についての議論を本格的にスタートさせた。その結果、(1)子どもは親と緊密で安定した関係をもつべきである、(2)子どもは子どもとして生活する機会を与えられるべきである、(3)子どもは社会のメンバーである、(4)子どもは責任をもつべきである、(5)子どもは健康な生活をする機会を与えられるべきである、という5項目の合意事項に基づいて、1990年代から政府のすべての省において具体的な取り組みが開始されることとなった。つまり、男女平等化の流れの中で、「子どものニーズと親の責任」がはじめて正面から取り上げられたのである。こうしたデンマークの問題意識と試みは、「家族責任」の理念とともに、EUの第2次、第3次男女機会均等推進行動計画の家族政策への傾斜を急速に促すことになった。

3.「家族責任」という理念の登場-被用者の権利としての親役割の遂行

男女の家族責任という考え方

「家族責任」という言葉が、EU諸国の男女機会均等推進行動計画の公式文書に登場するようになるのは、第3次行動計画からである。そこでは明確な定義はなされていないが、この理念が、そもそもは子どもをもつ労働者の権利として登場してきたことは確かである。1991年にILOの「家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約第165号」(通称ILO165号条約)の中ではじめて言及され、1993年にはILOの報告書において「家族責任をもつ労働者」の特集が組まれている。この中で主張されているのは「男女被用者は労働者であると同時に家族責任も有しているのだから、雇用者はそのことに配慮すべきである」という点である。ここで注目されるのは、従来、女性被用者に特定して用いられてきた家族責任の考え方を、男性被用者にも拡大したことである。こうして雇用における男女平等の促進は、90年代に入って親役割を果たす権利として、出産休暇とならんで、育児休業、病児の看護休業、就業時間の短縮、フレックス制の導入など、働き方のシステムそのものを見直す動きとなっている。つまり、子育て、すなわち次代の育成を社会の責任としてとらえ、使用側はそのことに配慮する実質的責任を問われるようになってきているのである。

新しい取り組み

EU各国は、それぞれの事情に応じて上記の理念を政策に生かす努力をしているが、注目されるのはオランダの取り組みである。従来オランダでは、我が国と同様「子どもは母親が家庭で育てるべき」という考え方が国民の間に根強くあったといわれている。今日でも「子どもは家庭で育てるべき」という点は広く支持されているが、異なるのは、男女がそれにあたる方法を国レベルで模索した点である。つまり、オランダ政府、労働組合、使用側の三者が協議のテーブルにつき、男女のパートタイマーでの就労を促進したのである。
オランダ政府は、1996年の新法施行と同時に「1・5稼働モデル」を打ちだし、夫婦合わせて1・5(フルタイムを1とすれば、フルとパートの組み合わせでもよいし、パート同士の組み合わせでもよい)という働き方を推進した。これは、基本的にはジョブ・シェアリングの考え方であるが、それを男女で行おうとしている。それが可能なのは、時間給賃金、社会保険、手当、年金、昇進など、雇用条件をフルタイムとパートタイムでまったく同等にした点にある。もちろん、90年代はじめからの国内諸政党の地道な努力の結果として、パート法改正、諸手当の改正、昇進条件の改正等、徐々に環境と条件が整備されてきたことではあるが、男女で働き、男女で子育てを実践して、「ダッチ・ミラクル(オランダの奇跡)」と呼ばれる、EUで1、2を争う好経済状態を実現したのである。
さて、振り返って我が国での子育て支援のあり方をみると、「社会全体で取り組む」という姿勢・視点がまだ弱いように感じる。デンマークのような保育所、デイケア・センターの充実といった地域での支援体制の面や、オランダのような働き方の支援体制の両面を含め、取り組むべきことはまだまだ多いように思われる。

松居和先生の推薦文をもらいました。

「便利な保育園が奪う本当はもっと大切なもの」の帯に松居和先生の推薦文をいただきました。

親を育てるのは、子供!

なぜ、いじめや幼児虐待に歯止めがかからないか。なぜ、社会は〇歳児を親から引き離そうとするのか。この本を読んで、政治家もマスコミも、そしてあなたも、真剣に考えて欲しい。社会(システム)で子育てなんてできるわけがない。

音楽家・元埼玉県教育委員会委員長 松居和

この本を読んで、考えて見て下さい。これまでの国や都の誤った保育施策の問題点をはっきり指摘し、問題の在処を示しています。同時に、この問題を解決する策として、本の後半には、保育園や幼稚園がなすべきことを記しました。是非、参考になさってください。

キーワードは「親心」を育てるです。

「便利な保育園が奪う本当はもっと大切なもの」を出版しました。

保育の世界に市場競争原理が導入されるようになった1995年頃からの保育施策の迷走ぶりには目に余るものがあります。そして今、規制緩和を梃子にした新しい保育システムが実施されようとしております。

一気に進む節操のない規制緩和は、待機児童の解消を旗印にして進められておりますが、本来の目的である少子化対策としての論拠を全く失っております。日本の子供たちのことを思うと「保育はこれでいいのか?」という思いが込み上げてまいります。

ここ数年、主任保育士たちと努力を重ね、「子供たちの発達と自分づくり(1歳〜5歳)」の完成を目指してまいりましたが、本書はその作成過程から派生し、現行保育施策の問題点をまとめて一冊の本にした方が良いのではないかということになり、先行出版することになりました。

保育に携わってから40年余り、保育・教育とは何かを問い続けてきた共励保育園の現場から生まれた保育施策に対する問題提起です。是非ご一読の上、厳しいご批判を賜りますようお願い申し上げます。