あの藤永保先生から、熱き賛同のお手紙をいただく!

拙著『「便利な保育園」が奪う本当はもっと大切なもの』について、保育・教育分野の権威、お茶の水女子大学名誉教授の藤永保先生からお手紙をいただきましたのでご紹介いたします。

藤永先生のご著書「創造性教育」は、共励保育園の保育実践を理論的に支えてくださったものです。当時、保育士の皆さんと読み合わせをしながら学んだことを思い出しました。先生、有り難うございます。

 

藤永保先生からの手紙

(発達心理学者・お茶の水女子大学名誉教授)

平成25年2月20日

エデュケア21研究会でお話を伺ったとき、多年のご経験に裏打ちされた周到な保育を行っていられることに感銘を受けました。

今回のご著作は、そうした実践を続けてこられた方にふさわしい力作です。保育所での乳幼児にはどんな処遇が必要か、またそのために乳幼児の家族との協力と連携が不可欠であることがよく感得できます。

実践記録も、現在の保育所一般の水準からすると、よくもここまで考え抜き具体化できていると感嘆させられます。

その意味で、私が最も感動したのは、貴園保育士の方々がふつうは求められることのない厳密な保育計画の意義を理解し、進んでそれに取り組む姿勢です。勤続年数が平均よりはるかに長いというのも、驚きです。

保育所であろうと幼稚園であろうと、保育者の士気——あえていえば使命感の高さが何よりも大切であり、そのためには園長に意欲と見識があり、それが職員と保護者に十分浸透していることが必要だといつも痛感させられています。貴園には、それが実現されていることを感得できました。

政治家や官僚は、就学前の保育・教育が生涯発達の最初のステップ——基礎を作り、その後の発達を規定しかねない重大な意義を持つことをほとんど理解していません。

待機児童解消だけが急務と考え、保育所の利用者とは保護者以上に子ども自身であるという自明の事実に気づいていません。だから、子育て政策に登場するのは、ほとんど効率化を説く経済学者だけという誠に惨憺たる有様になっています。

そこに、営利目的の企業が参入し、大きな利潤をあげて成功を誇っている例もあることは私もよく知りませんでした。貴著により、それらの営利保育所の実情が具体的に報告されているのも貴重な資料です。

他方、私が思うには、幼稚園界にしろ保育所界にしろ、代表組織とされているのはみな経営者団体であり、族議員に陳情して補助金をもらうことだけが自分たちの使命と錯覚しているような気がします。

勢い、自己の団体の利益を守るのに汲々とする余り、協同して就学前保育・教育の意義を啓蒙し、正当な自己主張を展開する見識すら失われつつあるようにみえます。まして、保育者の専門性の主張と待遇改善については、めぼしい主張はきいたことがありません。これでは自他ともに心細い限りです。

 私は、貴著の今回の主張の核心に多いに賛同します。早速、先日の私達のNPO講習回でも紹介させていただきました。私自身も、この問題を捨て置けないと感じ、4月始めに一書にまとめて公刊する予定でおります。その際は、献本させて頂くつもりですが、同憂の著書が世に出たことには大変嬉しい思いです。

藤永 保


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