イノベーション・オブ・ライフ

イケダハヤト氏ご推薦の世界で最も影響力のあるマネジメント50人(Thinkers50)で第1位を獲得したクリステンセン教授のハーバード・ビジネススクールの最終講義「イノベーション・オブ・ライフ」(クレイトン・M・クリステンセン著)を読みました。

イケダハヤト氏は、共励保育園にまで足を運び、3時間半の取材後、ご自分のブログに共励保育園の保育について印象を書いてくださいました。その後、拙著「便利な保育園が奪う本当はもっと大切なもの」についてイハヤト書店で紹介してくれています。

http://www.ikedahayato.com/index.php/archives/20136(イケダハヤト氏の感想)

http://www.ikedahayato.com/index.php/archives/20150(ノマド・ワーキングについて)

さて、表題のイノベーション・オブ・ライフ、この本にはとても大切なことが書かれています。子を持つ親のための必読書です。

「ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ」(How will you measure your life.?)と副題し、豊かな人生を送るために、ハーバード・ビジネススクールを卒業する若者へ贈る言葉としてまとめられたものです。

その中の「人生の投資を後回しにするリスク」(102ページ)には、次のように記されています。

『とくに前途洋々な若きエリートたちが陥りがちな間違いは、人生への投資の順序を好きに変えられると思いこむことだ。たとえばこんなふうに考える。「いまはまだ子どもたちが幼くて、子育てはそれほど大事じゃないから、仕事に専念しよう。子どもたちが少し成長して、大人とおなじようなことに関心をもつようになれば、仕事のペースをおとして、家庭に力をいれればいいさ」。 さて、どうなるだろう? その頃には、もうゲームは詰んでいるのだ。人生の試練を乗り越えるためのツールを子どもたちに与えるには、それが必要になるずっと前から・・たぶんあなたが思っているはるか前から・・子どもに投資しなくてはいけない。』

以上のように前書きして、生後数年間の子どもへの関わり方がいかに大切かを示します。ハーバード・ビジネススクール版「三つ子の魂100までも」です。

生後2年半までの、「親の語りかけ」が与える影響はとても重大で、この語りかけについては、単に子どもに何かを語りかければいいというわけではなく、「仕事の話」(用向きの話)という子どもに一方的に指示する言葉がけより、「言葉のダンス」という親子で楽しく言葉を交わす言葉がけの影響がとても大きい事を知らせてくれます。

そして、子どもたちが学校にあがってからの追跡調査でも、子どもたちが生後30ヶ月間に聞いた言葉の数と、成長してからの語彙と読解力の試験の成績とは、とても強い相関(0.78)があったとのことでした。

同じクリステンセン教授の著書「教育×破壊的イノベーション」の第6章「幼年期が生徒の成功に与える影響」には、幼稚園入園前になされるべきことがうまくなされれば、学校の仕事はかなり楽になるとして、次の3つの事をあげています。

1.幼児期に知的能力を開発すること。
2.強い、肯定的な自尊感情(核となる自己像)を養うこと。自尊感情は生涯にわたって育まれるが、その基盤は幼児期に確立される。
3.生涯にわたって学習を継続する動機となる、知的好奇心を触発すること。

これらは、共励保育園の総合保育の実践で子どもたちが獲得するようカリキュラムに組まれている内容となっています。

さて、仕事ばかりに心を奪われている親や政治家たちに、クリステンセン教授は次のように助言しています。

『人を雇って入学前の語りかけに成功していない親の代わりをさせる計画に資金を提供するよりも、親になる前の子どもに、親になるとはどういうことなのかを教えた方がおそらく効果が高いはずだ。(中略)生後間もない時期にどのような方法で子どもとふれあえば、子どもの学業面での成功を助けてやれるかという知識は、世代を超えた学業不振と貧困の悪循環に子どもとともにとらわれてきた、スラム街の若いシングルマザーに大きな利益をもたらすだろう。』

『また、この知識は将来の共働き夫婦にも役立つだろう。親になったばかりの共働き夫婦は、出産後できるだけ早く職場復帰しようとするあまり、乳幼児を早い時期から保育士の手に委ねることが多い。だが大勢の子どもを預かる保育士は、仕事の話(用向きの話)で手一杯なのだ。』(156ページ)

この助言は、ハーバード・ビジネススクールからの助言です。子供を保育園に預ける事ばかりに懸命になっている日本の親の方たちも、一歩立ち止まって、クリステンセン教授の助言に耳を傾ける必要があると思います。

親は、保育園には限界があることを、まず第一に知らなくてはいけませんし、「あまりにも不十分な国基準」だけで運営される株式会社運営の保育園では、「言葉のダンス」がどれほど保障できるかは、大いに疑問なのです。

どの子も自分のお母さんが、世界一大好きですし、お母さんとの対話(言葉のダンス)を望んでいます。その言葉のダンスは、子どもが言葉を獲得するずっと前から(生後12ヶ月が一番大切とのこと。また、胎内にいる間から子どもに語りかけることはとても大切と言われる方も多いです。)必要で、大切であるということは、やはり子どもが小さいうちは(特に0歳や1歳の子どもたちに関しては)、親が自分で育てることが大切のようです。

親だけでは大変ですので、子育て広場を利用すれば、子育てはとても楽しい体験になるはずです。012歳の子供を母親と分離させてしまう保育園の数を増やすより、親子で一緒にいられる子育て広場の方が、子どもにとっても、お母さんにとってもメリットはずっと大きいのです。それに、無理に保育園に預けようとしなくてよいのですから、待機児解消の切り札にもなります。

良識的な保育者は、集団での保育や教育は3歳からが望ましいと思っていますし、クリステンセン教授が指摘するように、012歳期での親との関わりが、後の集団保育・教育の質を支えるというのは、保育現場でも同意見です。3歳以降の集団保育が良い効果を持つことができるのには、012歳児期の親との関わりがとても大切だということです。

安倍総理が3歳までの育児休業を推進してくれることは、子どもたちにとって福音となります。お母さんにとっても、これは喜ばしいことなのです。それを、ご自分の仕事のキャリアと引き換えにするというのでは、あまりにももったいないのです。キャリアは何とか取り戻せますが、子どもの0歳や1歳の時期を取り戻す事はできないからです。

キャリアが取り戻せないと思い込むとしたら、会社がそのように仕向けているからでしょう。子育てを終わってから仕事に戻って、とても立派な成績を残している女性もいると聞いています。森雅子少子化担当大臣もそうだと思います。

20年経てば、0歳の子は20歳になります。社会に出てきた子どもたちが、よく育つかどうかは、012歳の頃の親との関わり(言葉のダンス)に強い関係があるとすれば、子育て時期のお母さんに対する配慮は、会社への投資であると社長さんも思った方が良いのです。

会社の社長さんが、若者を採用する段階で、社会的な力がないと悲鳴を上げていると聞いていますが、子どもが012歳のときに投資が大切だというクリステンセン教授の助言に耳を傾けるべきだと思います。これは、イマジネーションの問題でしょうか?いや、科学的に調査した結果、引き出された結論です。脳科学的にも証明されるでしょう。

日本の会社の社長さん、どうぞよろしくお願いいたします。


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